lundi, mai 27, 2013

ポーの大きな鴉・・・ 【闇夜の孤独な妖精】

  大鴉  The Raven               
                   エドガー・アラン・ポー/壺齋散人訳

   

  あるわびしい夜更け時 わたしはひそかに瞑想していた
  忘却の彼方へと去っていった くさぐさのことどもを
  かくてうつらうつらと眠りかけるや 突然音が聞こえてきた
  なにかを叩いているような音 我が部屋のドアを叩く音
  いったい何者なのだろう 我が部屋のドアを叩くのは
  それだけで 後はなにも起こらなかった

  はっきりとわたしは思い出す 12月の肌寒い夜のことを
  消えかかった残り火が 床にあやしい影を描いた
  夜が明けるのを願いつつ 書物のページをくくっては
  わたしは悲しみを忘れようと努めた レノアを失った悲しみを
  類まれな美しさの少女 天使がレノアと名づけた少女
  彼女は永遠に失われたのだ

  紫色のカーテンの かすかな絹のさやめきが
  それがわたしを脅かし 感じたことのない恐れで包んだ
  震える心を静めるため わたしは立ったままつぶやき続けた
  誰かが部屋の扉をたたき 中へ入ろうとしている
  深夜に部屋の扉をたたき 中へ入ろうとしている
  そうだ それ以上ではない

  やがて気持を持ち直し ためらうことなくわたしはいった
  紳士にせよ淑女にせよ 是非あなたのお許しを請いたいと
  だが実は夢見心地で あなたの近づくのを感じていた
  あなたは軽い足音をたて わたしの部屋の扉を叩く
  あまりにかすかで聞き取れぬ音に わたしは扉を開け放った
  扉の外は闇で 他にはなにも見えなかった 

  深い闇の中を覗き込みながら わたしはいぶかり立ち尽くした
  誰もあえて見ることを 望まない夢のような気がして
  沈黙は破られず 闇には何の兆候も見えない
  ただひとつ言葉が発せられた レノアとささやく言葉が
  わたしが発したその言葉は 闇の中をこだまする
  これだけで 後は何も起こらなかった

  心を熱くたぎらせながら 部屋の中に戻っていくと
  再びこつこつという音が聞こえた 今までよりも大きな音が
  たしかにこれは だれかが窓格子を叩く音だ
  いったい何事が起きているのか その様子を確かめてみよう
  心をしばし落ち着かせて その様子を確かめてみよう
  だがそれは風の音 それ以上ではなかった

  わたしが格子を押し開けるや バタバタと羽をひらめかせて
  大きな烏が飛び込んできた 往昔の聖なる大鴉
  傲岸不遜に身を構え ひとときもおとなしくせず
  紳士淑女然として 扉の上にとまったのだ
  わたしの部屋の扉の上の パラスの胸像の上に
  とまって座って それだけだった

  この漆黒の鳥を見て わたしの悲しみは和らいだ
  気品に溢れた表情が おごそかでいかめしくもあったゆえに
  お前の頭は禿げてはいるが 見苦しくはないとわたしはいった
  夜の浜辺からさまよい出た いかめしい古の大鴉
  冥界の浜辺に書かれているという お前の名はなんと言うのか
  大鴉は応えた ネバーモア

  この無様な鳥が明確にものをいうのに わたしは大変驚いた
  たとえその言葉には意味がなく 何を言っているかわからぬとしても
  だがこんな鳥が自分の部屋の 扉の上にいるのは素敵だ
  扉の上の胸像の上に 不思議な名前の鳥がいるのは
  ネバーモアという名の鳥が

  大鴉がいったのはただそのひとこと 塑像の上に孤立しながら
  その言葉にまるで 己の魂をこめたように
  それ以上大鴉はものいわず 羽を動かすこともなかった
  そこでわたしはつぶやいたのだ 以前にも同じようなことがあった
  それは夜明けとともに去ってしまった 希望が去っていったように
  すると大鴉はいったのだ ネバーモア

  かくも時を得た答えに 沈黙が破られたのに驚き
  わたしはいった 疑いもなく これがこの鳥のただひとつの言葉
  それは不運な飼い主から教わった言葉 そうだその男は
  過酷な運命によって これでもかこれでもかと打ちのめされ 
  もはや口に上る言葉といえば ただひとこと
  ネバー ネバーモアのみ

  それでも大鴉がこの哀れな心を 慰めてくれようとするのを見て
  わたしは大鴉の目の前に 安楽椅子を引いていっては
  深々とクッションにうずまりながら あれこれと想像を回らした
  この大昔の不吉な鳥は 陰鬱で 無様で いやらしい 
  この不吉な鳥はわめきながら いったい何を言いたいのかと
  ネバーモアということばで

  あれこれと思い測りつつ 一言も発することのないうちに
  大鴉の目の炎が わたしの心の中にまで燃え広がる
  それでもわたしは考え続ける 頭を椅子の背に凭せかけながら
  その椅子の背にはランプの光が ビロードの生地を照らし
  そのランプの光に照らされた 椅子の背には彼女が
  もう身をゆだねることはないのだ

  すると空気が密度を濃くし どこからともなく匂いがただよい
  香炉を振り回す天使たちの 足音が床に響く
  やれやれこの天使たちは 神がわたしに差し向けたのか
  この匂いはレノアへの思いを 和らげるための妙薬の匂いか
  この妙薬を飲み干せば 辛い思いが忘れられるのか
  大鴉が答えた ネバーモア

  邪悪な預言者よ 鳥であれ悪魔であれ
  誘惑者であれ 難破した漂流者であれ
  孤高で不屈なものよ どうか言ってくれ
  この呪われた砂漠のような地に 幽霊たちの住処のような家に 
  果たしてギレアドの香木が 存在するかどうか言ってくれ
  大鴉は答えた ネバーモア

  邪悪な預言者よ 鳥であれ悪魔であれ
  あの聖なる天蓋にかけて 父なる神の名にかけて
  この悲しみに打ち沈んだ魂にいってくれ はるかなエデンの園のうちで
  天使がレノアと呼んだ娘を 果たして見ることがあろうかと
  かの類いまれな美しき少女 天使がレノアと呼んだ娘を
  大鴉は答えた ネバーモア

  もうたくさんだ わが仇敵よ わたしは飛び上がって叫んだ
  去れ 嵐の中へ または暗黒の冥界の海辺へ
  形を残さずに消えろ お前の言葉の余韻も残さず
  わたしを孤独の中に放っておけ その場から消えていなくなれ
  わたしのこころを静かなままにして その場から消えていなくなれ
  大鴉は答えた ネバーモア

  すると大鴉は飛び回ることなく じっと動かずにうずくまったまま
  扉の上の塑像の上に 乗ったままの姿勢を保ち
  目はうっとりと閉じられて 夢を見る悪魔のよう
  ランプの光に照らされて 身は床の上に影を落とし
  わたしはその影の中から 抜け出そうとするが
  もはや抜け出すこともままならないのだ




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黒い光沢のある羽根に、わたしは想いを馳せる。






近日のライブ情報=============


6月2日(日)ローソンチケット販売中
独り埼玉フェス
主催:マサキオンザマイク(ZIGOKU-RECORD)
西川口ハーツ 
17:00start 
¥1,000(ドリンク別)
 DJ TAICHOU
 DJ YEW
 SAVIORR
 the ビューティフルニー
 chemical reaction
 Regina〈砂猫女王〉 a.k.a 後藤理絵
 河先 健
 Fizz
 Z.I.O-RAMA
 eBi
 SAG.MIC
 ゆうま
 popo
 SALPHA
 ナカザワニンジャ
    and more... 


6月20日(木)
邪悪なる胎動 vol.5」 
主催:ikoma (DOWN 4-REALIZE)
@明大前 Cafe Bar LIVRE
¥1,000+1d (¥600)
 雲雀
 WHITE WOOD
 Regina〈砂猫女王〉 a.k.a 後藤理絵
 Rayzie-k & yukihiLL
 Z.I.O-RAMA
 DAKA
 前里慎太郎
    and more...

6月28日(金)
主催:【Re:birth】EMDEE1+k-over
OPEN/START - 17:30 / 18:00
adv.¥1500 / door.¥1800
― 4F
 大門オーケストラ(足利)
 k-over(術ノ穴/【Re:birth】)
 Ring Ring Lonely Rollss
 imp.
 The Depth of Sad Dreaming
― 3F
 quenoirs (CALMLAMP)
 マサキオンザマイク & Regina〈砂猫女王〉
― 3F(ART)
 LIVE PAINT:
 EMDEE1 (【Re:birth】/【Re:ZINE】)
 marooer(RDN)
― DJ
 LEFTHAND SOUNDSYSTEM
 Yosuke Takahashi(Suburban Flag) 
― SUPER STAFF
 マサキオンザマイク
    and more..

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